プレゼンテーションの達人になる方法

実技研修室5■直前の準備

服装

 ドレスコードが指定されていなくても、学会やコンペの服装では、ビジネススーツが一般的です。
 ビジネススーツの基本としては、濃紺またはチャコールグレーのジャケットおよびボトムスに白のシャツ/ブラウス、黒の革靴を合わせます。
 就職活動において黒のスーツを着ている学生さんが多いですが、国際的な感覚からすると、黒のスーツは葬式用かマフィア用です。国際会議や外資系企業の場では、異様な印象を与えるかもしれません。ニュース映像を見ると、大統領や首相は、必ず濃紺またはチャコールグレーのスーツを着ています。安倍首相は濃紺が多く、トランプ大統領もオバマ元大統領もチャコールグレーを着ています。これがビジネススーツの正統です。
 シャツ/ブラウスは、カフスボタンで留める長袖のものです。
 靴下の色は、スーツに合わせます。白い靴下は、スーツの色によらず不適切です。
 2つボタンジャケットの場合、上のボタンを留めます。2つボタンでも3つボタンでも、一番下のボタンは留めません。
 男子の場合は、ネクタイ(ジャガードタイ)を着用します。
 女子の場合、ボトムスにスカートかパンツかを選ぶことになります。スカートはパンツに比べて動きにくいので、緊張する場面では、つまづいたり転んだりするトラブルの原因になります。また、スカートは女らしさをアピールする服装なので、「内容に自信がないから女らしさをアピールしようとする勘違い女」という印象を与える恐れもあります。したがって、プレゼンテーションの場ではパンツの方が適切です。靴についても、ある程度ヒールの高さがあってもかまいませんが、つまづいたり転んだりするトラブルのリスクを考えると、ハイヒールはやめておきましょう。
 男子の場合は政治家の服装がお手本になりますが、女子の場合、有名女性政治家の服装はお手本になりません。メルケル首相はパンツ派ですが、小池知事やメイ首相はスカート派のようです。また、女性政治家は、議会や記者会見でも有彩色・柄物のジャケットを召しておられることが少なくありません。首脳会議における女性首脳は、たいてい目立つ有彩色を召しておられるように思います。これらには、女性政治家特有の計算があると考えられます。このため、女子の場合、女性政治家の服装はお手本になりません。普通の仕事女子が小池知事のような服装でプレゼンテーション会場に現れたら、かなり違和感があると思います。
 服の準備・点検は、できれば早めに始めましょう。スーツをクリーニング屋さんに預けたままにして、前日の夜に気づいても手遅れです。また、しわが入っていないか、ジャケットの肩に髪の毛やほこりがついていないか、前だけでなく後ろからも見て、点検しておきます。

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下見および試写

 できれば、会場を下見しておきましょう。スライドショーを再生する端末の置き場所がどこか、持ち込み端末を接続することが可能か、スクリーンの大きさ、指示棒型ポインターが届くか、スクリーンの左右どちら側に立つようになっているか、ポインターを左右どちらの手で使うか、照明の明るさがスライドショーの時、質疑の時でどれくらい変わるか、スライドショーのときに手元の原稿・資料が見える明るさがあるか、原稿・資料を置くスペースがあるか、マイクが手持ちかピンマイクか、マイクがワイヤレスかワイヤードか、ワイヤードマイクの場合マイクを持ったままスクリーンの端から端まで動けるか。確認したいことはたくさんあります。
 これらを下見で確認しなかったからと言って、それほど困ることはありません。しかし、確認しなければ、どうしても、本番で戸惑ったり、もたもたすることになります。こういうプレゼンターの振る舞いは、「頼りない人」「デキない人」という印象を聴き手に与えがちです。確認しておけば、てきぱきと振る舞えるので、「頼りになる」「優秀そう」という印象を与えることができます。
 さらに、確認した結果によっては、なんらかの対策や準備が必要であることもあります。
 たとえば、マイクが手持ちであれば、マイクおよびポインターだけで両手がふさがり、原稿を持つことはできないことになります。
 ワイヤレスマイクの場合、プレゼンテーションの途中で電池が消耗すると、音が切れたりハウリングを起こしやすくなるので、トランスミッターに使われている電池のサイズおよび個数を調べ、予備の電池をポケットに忍ばせておくと安心です。万一、本当に途中で電池が消耗し、ポケットから予備電池を出して手際よく交換し、涼しい顔でプレゼンテーションを続けるようなことになれば、あなたの評価はうなぎ登りでしょう。
 スライドの試写は必ずやっておきましょう。
 会場に用意されている端末を借りる場合は、スライドショーが正常に動作するか、始めから再生してみます。途中で動画や音声を再生する場合に、正常に動作しないことがよくあります。会場に用意されている端末は普段使い慣れていないわけですから、「スライドのファイルを開く」「スライドショーの開始」「次のスライドに切り換える」「特定のスライドから再開」「ファイルを閉じる」などの操作方法も把握しておきます。
 端末を持ち込む場合は、動画が動作しないなどの心配はありませんが、会場の設備との相性が悪いと、映像が出なかったり、一部が欠けたり、アスペクト比が狂ったりすることがあるので、やはりテストが必要です。

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前日の使い方

 練習では完璧だったのに、本番では今ひとつということもあれば、練習からは想像できないほど本番でうまく行くということもあります。本番を成功させるためには、入念な準備だけでなく、本番直前の過ごし方も大切です。
 優勝に絡むような一流のアスリートは、本番に向けて集中力を高めると言われています。公聴会やコンペのように重要なプレゼンテーションの場合も、自分の出番に集中力のピークを持っていくことが大切です。
 そのためには、出番の約24時間前を過ぎたら、原稿およびスライドの大きな手直しをやってはいけません。ダメ出しを伴うリハーサルもやめてください。その時点でできあがっている原稿およびスライドを最終版として、原稿を完璧に暗記し、何も考えなくても次から次へと説明できるようになるまで、練習を繰り返します。これによって、自信を深めることができます。
 また、プレゼンテーション以外の仕事に、できるだけ頭を使わないようにします。練習に疲れたら、頭を使わず、ただボーッとしていましょう。SNSやゲームなどは、プレゼンテーションへの集中力を損なうのでよくありません。音楽を聴くのはかまいません。
 さらに、普段より早めに就寝します。睡眠には記憶を定着させる働きがあるので、たっぷり睡眠を取ることが、準備の仕上げになります。

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会場設営~照明の明るさ

 会場の設備などが常に最適の状態にセットアップされているとは限りません。OHPの時代のこと、ある地方都市の市民講座に招かれて講演したとき、珍しいOHPプロジェクターが用意されていたので、使い方を聞いたところ、その会場の担当者が「いやあ、私も全然わからないのです。わっはっは」と自慢されたことがあります。結局、そのプロジェクターではOHPシートの交換に時間がかかり、講演に想定の2倍近い時間がかかってしまいました。
 通常、会場設営はプレゼンターの仕事ではありません。しかし、会場の設営がトホホな状態であれば、プレゼンテーションもトホホな結果にならざるを得ません。このような事態はめったに起こるものではありませんが、万一遭遇してしまったら、プレゼンターとしては、自衛のために、ある程度、会場設営に関与できるスキルをもっている方がよいかもしれません。
 また、日常的な営業活動や、内輪のセミナーなどでは、ポータブルのプロジェクター類を持参し、移動先の会議室にセットアップすることもあります。
 そこで、会場設営についても、達人としては把握しておいた方がよいことをいくつか整理しておきましょう。
 まず、会場の明るさです。スライドショーのときは照明を暗くし、質疑応答の時は明るくするものだと思い込んでおられる方が多いようです。それは、誤りとまでは言いませんが、本質的なことではありません。本質的に重要なのは、次の2つです。
(1) スライドショー実行中は、会場のどこからでもスライドが明瞭に見えること。
(2) スライドショー実行中か質疑応答中かに関わらず、聴き手が資料を読むことができ、メモを取ることができ、スムースに部屋を出入りすることができる程度の明るさがあること。
 かつて、銀塩フィルムでスライドを作っていた時代があります。この頃のスライド映写機の光源は白熱ランプだったので、窓を暗幕でふさぎ、映画館のように暗くしなければスライドがよく見えませんでした。このため、スライドショー実行中は部屋の照明をすべて消し、質疑応答に入ったら照明をつけていました。この時代に初めてプレゼンテーションに接した世代の人々の中には、これが習慣になっている方が少なくありません。
 しかし、OHP(オーバー・ヘッド・プロジェクター)が登場して、状況が一変します。OHPの光源は非常に明るく、窓はカーテンを引く程度、部屋の照明をつけたままでも、画面を見ることができるようになりました。
 その後、液晶プロジェクターとデジタル・スライドの時代になり、光源の性能はさらによくなっています。現代の液晶プロジェクターでは、映写時に部屋を暗くする必要性がほとんどありません。
 したがって、会場設営の際、スライドをスクリーンに映写してみて、スライドが明瞭に見える範囲内で、部屋をどこまで明るくできるかをいろいろ試してください。部屋の状況次第ですが、多くの場合、窓のカーテン/ブラインドを閉じ、黒板灯を消し、スクリーンに最も近い天井灯を1列ほど消すか消さないかくらいで、スライドが充分見えるはずです。この状態で、聴き手が資料を読むことができ、メモを取ることができ、スムースに部屋を出入りすることができる程度の明るさがあれば、質疑応答のときも照明はこのままで大丈夫です。
 聴き手が資料を読んだりメモを取ったりすることができず、安全に通路を歩けないほど暗くしなければスライドがよく見えない場合に限って、スライドショーと質疑応答とで照明を切り換えます。
 たまに、映画館のように部屋を暗くしているプレゼンテーション会場があります。聴き手としては、プレゼンテーションの最中も、資料を見たり、メモを取ったり、部屋を出入りしたいので、あまり暗くされると困ります。それに、不気味です。

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液晶プロジェクター

 スクリーンの正面にプロジェクターを起きます。正面からずれると、長方形になるべき投影画面が歪んで台形になります。このひずみを補正する機能がほとんどのプロジェクターに備わっていますが、補正をかけると、なんらかの副作用が生じます。初めから補正機能をあてにするのでなく、まずはできるだけ正面に置くようにします。
 次にスクリーンとプロジェクターとの距離を調節します。プロジェクターをスクリーンから離すほど、画面が大きくなります。投影画面がスクリーンの有効サイズいっぱいになる距離を探します。このとき、プロジェクターの位置がスクリーンの正面からずれないように注意しましょう。
 こうしてプロジェクターの置き場所が決まったら、プロジェクターが載っている机の脚に、プロジェクターの電源ケーブルおよびVGAケーブルを1回巻き付けます。こうしておかないと、通路を人が歩いた際、脚がケーブルに引っかかって、プロジェクターやスライド端末を落下させる恐れがあります。
 また、プロジェクターとケーブルとの接続部は、大きな重さを支えるようにはできていません。接続部にケーブルの重さが加わると、接続不良になったり、破損する恐れもあります。ケーブルの長さにしておよそ1メートルを越えるような重さが、接続部に直接かからないように注意しましょう。

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会場設営~アスペクト比

 画面の高さおよび幅の比をアスペクト比(または縦横比)と言います。スライドを作ったときのアスペクト比とプロジェクターのアスペクト比とが合っていないと、像が縦長または横長に歪むことがあります。このひずみをチェックするには、円が便利です。スクリーンに映写してみて、円が楕円になっていたら、アスペクト比が合っていません。プロジェクターのアスペクト比を、円が円に見える設定に変更します。

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会場設営~音響

 ワイヤレスマイクを複数使う場合は、トランスミッターの周波数を1台ごとに異なるように設定しておきます。同じ周波数を使うトランスミッターが2台あると、干渉して音が切れます。トランスミッターに周波数の切り替えスイッチがない場合は、ワイヤレスマイクは1台しか使えません。
 ワイヤレスマイクの電池が消耗すると、ハウリングや音切れなどのトラブルが起こりやすくなります。予備の電池を用意しておきましょう。
 赤外線式のワイヤレスマイクの場合、受光センサーが天井や壁に設置されています。テレビとリモコンとの間に障害物があるとリモコンが効かないのと同じで、受光センサーと赤外線式ワイヤレスマイクとの間に光を遮る物があると、音が切れます。プレゼンターが体の向きを変えたときに、光を遮ることがあるので注意しましょう。
 有線マイクの場合、プレゼンターがスクリーンの左右どちらに立っても充分な長さのコードを用意します。
 有線、ワイヤレスを問わず、マイクとスピーカーとの距離が近すぎると、ハウリングが起こります。スピーカーを移動できるなら、できるだけ会場の後ろの方に置きます。

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会場設営~演台

 プレゼンターが利き手でポインターを使えるよう、プレゼンターが右利きの場合は、スクリーンに向かって右側に演台を置きます。左利きの場合は逆です。
 演台には、スライド端末だけでなく、原稿や手持ち資料などを置ける広さが必要です。
 多くの会場では、演台に置いたスライド端末を操作して次のスライドに切り換えていますが、手に収まるくらいのサイズのリモコンで次のスライドに切り換えることができれば、聴き手をプレゼンテーションに集中させやすくなります。そのようなリモコンの設備が演台に用意されていなくても、スライド端末に合うリモコン商品を探せば、比較的安価で出回っています。スライド端末にiPadを使うなら、iPhoneをリモコンにしてiPadのスライドを制御できます。
 プレゼンターはポインターでスライドのいろいろな場所を指示するので、スクリーンの端から端まで動き回る可能性があります。また、スライドを特に指す必要のない状況でも、アップル・コンピュータの発表会などを見ればわかるように、印象的なプレゼンターはステージを端から端までよく動き回って、聴き手にしっかり語りかけます。したがって、スクリーンおよび演台周りのレイアウトは、プレゼンターの自由度を優先して決めるべきです。部屋の構造や備品の制約から「演台はここにしか置けない」「端末はここしか置けない」「プレゼンターはここにしか立てない」というような状況は、会場設営としては望ましくありません。

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